──Bad Bunny無双と、ポスト・レゲトン時代の始まり
2025年11月13日(現地)、ラスベガスのMGMグランド・ガーデン・アリーナで開催された
第26回ラテン・グラミー賞(Latin GRAMMYs 2025)。
ノミネーション特集の段階では「アーバン勢とメキシコ勢がカギ」と書いた。 しかし2025年のラテングラミーが見せたのは、予想を超える“圧倒的な物語”だった。
ただし、それだけではない。
Alejandro Sanz、Karol G、CA7RIEL & Paco Amoroso、Carín León など、
ラテン音楽の“多極化”を象徴する受賞結果になった。
この記事では、
既存のノミネーション特集とつなげながら、
レゲトン/アーバン視点で2025年ラテングラミーを総まとめしていく。
総合部門:誰が“今年の顔”になったのか?
まずはラテングラミーの花形・総合4部門から。
◆ Album of the Year
Bad Bunny – 『Debí Tirar Más Fotos』
Bad Bunny / Debi Tirar Mas Fotos (ホワイト・ヴァイナル仕様 / 2枚組アナログレコード) 【LP】 価格:7260円 |
2023年作『Nadie Sabe Lo Que Va A Pasar Mañana』からさらに歩を進め、
プエルトリコのルーツ音楽(プレーナ、ボンバ、サルサなど)とレゲトン/ハウスを大胆にブレンドしたこのアルバムが、年間最優秀アルバムに輝いた。
政治・アイデンティティ・移民・観光開発…
歌詞面でも「プエルトリコという場所」を正面から語り切った作品で、“単なるクラブミュージックのスター”ではなく「ラテン音楽の語り部」になったBad Bunny を象徴する一枚だ。
◆ Record of the Year
Alejandro Sanz – 「Palmeras en el jardín」
レコード・オブ・ザ・イヤーは、
スペインのレジェンド Alejandro Sanz が獲得。
繊細なアレンジと歌い上げすぎないボーカルで、ラテンポップの王道を更新してみせた。
ここ数年アーバン系が強かった総合部門で、“ソングライティング勝負のポップ”が勝った のは
大きなポイント。
◆ Song of the Year
Karol G – 「Si Antes Te Hubiera Conocido」
年間最優秀楽曲は、Karol G。
片思いと “もしも” の世界線を描いた一曲で、切ないメロディと温かいグルーヴが、
レゲトン世代にもポップ世代にも刺さる仕上がり。
ノミネーション特集でも「Karol Gのソングライティング力」に触れたが、
今回の受賞で“クラブの女王”から“ラテンポップのソングライター”へ完全に格上げされた印象だ。
◆ Best New Artist
Paloma Morphy
新人賞はメキシコ出身のシンガー Paloma Morphy。
Regionalのテイストとポップ感をミックスしたスタイルで、
今後の“メキシコ勢の第二波”を担う存在として一気に注目度が上がった。
レゲトン&アーバン部門:Bad Bunnyの“5冠”が意味するもの
◆ Best Música Urbana Album
Bad Bunny – 『Debí Tirar Más Fotos』
アルバム・オブ・ザ・イヤーとダブル受賞。
もはや“アーバン部門の枠を超えた作品”として評価された形だが、
部門としてはしっかりMúsica Urbana Albumも制覇。
Best Reggaeton Performance
Bad Bunny – 「Voy A Llevarte Pa’ PR」
ここは完全に王道レゲトン枠。
重めのベースとキャッチーなフックで、“レゲトンの今”を象徴するような一曲。
Bad Bunnyは実験的な楽曲も多いが、この曲ではあえてクラシックなノリを残し、
“まだレゲトンは終わってない”ことを示したかのよう。
Best Urban Song / Urban Fusion Performance
Bad Bunny – 『Debí Tirar Más Fotos』
・リズムはレゲトン寄り
・サウンドはハウス〜エレクトロ
・コードとメロディはどこか哀愁
まさにレゲトン以降の“都市音楽”の完成形として評価されたと言っていい。
ノミネーション組:Feid & Rauwは“次の年”への伏線
ノミネーション特集で推していた Feid や Rauw Alejandro は、
残念ながら主要アーバン部門では受賞ならず。
ただし
- ストリーミング実績
- ツアー動員
- 他アワードでの評価
を考えると、
「2025年のアーバン・ムーブメントを作った立役者」であることは間違いない。
今年はBad Bunnyの“物語”が強すぎたというのが正直なところで、
2026年以降の巻き返しに期待したい。
オルタナ部門
Best Alternative Album
CA7RIEL & Paco Amoroso – 『Papota』
Ca7riel & Paco Amoroso / Papota 【CD】 価格:2860円 |
レゲトン、エレクトロ、インディーポップ、ヒップホップが
ぐちゃっと混ざったサウンドで、
“ラテン=ダンスミュージック”というイメージをぶち壊す存在だ。
彼らはビデオ部門なども含めて5冠を達成しており、
「インディー系アーティストがラテングラミーを制する時代」に入ったことを象徴している。
Regional Mexicano:Carín LeónとChristian Nodalの強さ
Regional Mexican Album
Carín León – 『Palabra de tos (seca)』
今年のRegional Mexicanoアルバム部門は、
メキシコ・ソノラ州出身の Carín León が受賞。
泥臭い声と現代的なアレンジを両立させたアルバムで、
地域音楽×ポップ感 のバランスが絶妙。
Ranchera/Mariachi Song
Christian Nodal – 『¿Quién + Como Yo?』
ランチェラ/マリアッチ部門では Christian Nodal が勝利。
若手ながら伝統路線を真っ向からアップデートしており、
Regionalの世界ではすでに“次世代の顔”といっていい存在だ。
2025年ラテングラミーが示した“3つのキーワード”
最後に、ノミネーション特集との整合性も踏まえつつ、
今年の結果を3つのキーワードでまとめておく。
① Bad Bunnyの“文化系アーティスト化”
『Debí Tirar Más Fotos』で
- Album of the Year
- Música Urbana Album
- Urban Song
- Urban Fusion Performance
- Reggaeton Performance
と5冠を達成したBad Bunny。
クラブのスターから、
プエルトリコの歴史・政治・アイデンティティまで背負う存在へ。
レゲトンの枠にとどまらない“文化アイコン”としての立場が
完全に固まったと言える。
② 多極化するラテン音楽:PR/コロンビア/メキシコ/アルゼンチン/スペイン
今年の受賞者を国別にざっくり見ると、
- プエルトリコ:Bad Bunny
- コロンビア:Karol G
- メキシコ:Carín León, Christian Nodal, Paloma Morphy
- アルゼンチン:CA7RIEL & Paco Amoroso
- スペイン:Alejandro Sanz
と、主役が完全に分散している。
③ ポスト・レゲトン時代の入口
- Bad Bunnyがルーツ音楽とレゲトンをミックス
- Karol GがポップソングでSong of the Year
- CA7RIELがオルタナで5冠
- Regional Mexicanoがチャートも授賞式も席巻
これらを全部まとめると、
「レゲトンを土台にしながら、そこから外へ伸びていく音楽が評価される時代」
に入った、ということだと思う。
レゲトンのビートはまだまだ現役。
でも、その上で鳴っているサウンドは
ますます多様になっていく。
おわりに
ノミネーション特集で追いかけてきた
2025年ラテングラミーは、
- Bad Bunny無双
- Karol G/Alejandro Sanz/CA7RIEL/Carín Leónの躍進
- メキシコ&アルゼンチンの台頭
という形で幕を閉じた。
日本ではまだ「Despacito以降」で止まっている人も多いけれど、
2025年は、レゲトン全盛期の“単極構造”から、
プエルトリコ・メキシコ・コロンビア・アルゼンチンが並び立つ
“多中心ラテン時代” へと移行した象徴的な年だった。



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