1. サマソニ2025出演の衝撃:日本初上陸の意味
2025年8月、真夏の東京と大阪を舞台に開催された「SUMMER SONIC 2025」。
その出演ラインナップに “FEID” の名前を見つけて驚いた人も多いはずだ。
Feid(フェイド)は、南米コロンビアを拠点に活動するシンガーソングライターであり、いま世界のラテン音楽シーンで最も勢いのあるアーティストの一人だ。
緑のキャップをトレードマークにしたスタイル、メロディアスで聴きやすいレゲトンサウンド、そしてキャッチーなフックで数々のヒットを飛ばしている。
Feidにとって、SUMMER SONIC 2025でのパフォーマンスは事実上の“初めての日本での大規模ライブ”であり、Beach Stageを自身でプロデュースした初のラテン系アーティストとして記録された。
Bad BunnyやJ Balvinといったビッグネームに比べると日本での知名度はまだ限定的だが、彼の出演は「レゲトンが日本の大型フェスに本格的に食い込んできた瞬間」として大きな意味を持つ。
それは、単に新しいスターが現れたという以上に、ラテン音楽の波が日本に押し寄せている象徴的な出来事であった。
2. Feidの生い立ち:メデジンから世界へ
Feid、本名 Salomón Villada Hoyos は1992年、コロンビアの都市メデジンで生まれた。
この「メデジン」という街は、レゲトンの世界的な震源地のひとつだ。J BalvinやMalumaといったアーティストを輩出し、いまやプエルトリコと並ぶレゲトンの中心地として知られている。
幼少期のFeidは、クラシック音楽や地元の伝統音楽にも触れながら成長した。
家族は音楽好きで、彼自身も子どものころから楽器に親しみ、自然と「音楽を作ること」に惹かれていった。
後に大学で音楽を専攻し、作曲やプロダクションについて本格的に学ぶことになる。
特に彼の音楽スタイルに影響を与えたのは、地元メデジンで盛んだった 「第二世代レゲトン」 のムーブメントだ。
2000年代半ば、Daddy YankeeやDon Omarが世界的にブームを巻き起こした後、コロンビアでは「自分たちのレゲトン」を模索する若い才能が現れていた。
Feidはその潮流の中で育ち、やがてソングライターとして頭角を現すようになる。
「アーティストとして表舞台に立つ前に、まずは曲を書く側としてキャリアを積む」──これはFeidの大きな強みになった。
単なる歌手ではなく、“プロデューサー気質を持つシンガーソングライター” であることが、後の成功へと繋がっていくのだ。
3. 国際的ブレイクまでの道のり
Feidのキャリアのスタートは、歌手としてではなかった。
彼はまず ソングライター として名を上げる。2015年ごろからJ Balvinをはじめとするコロンビアの大物アーティストに楽曲を提供し、そのセンスが注目されるようになった。
特にJ Balvinのアルバム制作に関わったことで、Feidは「裏方の才能」から「表舞台を狙う存在」へとシフトしていく。
この時期の経験は、音楽業界での人脈作りや制作スキルの習得に大きく役立った。
そして2016年、自身名義でリリースしたシングル 「Qué Raro」 が転機となる。
この曲はJ Balvinとのコラボレーションで、南米を中心に広く知られるきっかけとなった。
「裏方」から「表現者」へ──Feidが自分の声で勝負できることを示した重要な一曲だ。
その後もリリースを重ね、ついに2019年に発表された 「PORFA」 でブレイクを果たす。
哀愁漂うメロディとシンプルながら力強いレゲトンのビートは、SpotifyやYouTubeで爆発的に再生され、ラテンアメリカを飛び越えて世界中でヒット。
続く「Feliz Cumpleaños Ferxxo」や「Chorrito Pa Las Animas」も大成功を収め、彼の名前は一気に国際舞台で知られるようになった。
特に注目すべきは、彼のSpotifyでの成長曲線だ。
2020年から2023年にかけて月間リスナー数は急上昇し、数千万規模に到達。
これはBad BunnyやKarol Gと同じ土俵で語られることを意味し、レゲトン新世代の中心人物としてのポジションを確立した瞬間でもあった。
4. Feidの音楽スタイル:レゲトン×ラテンポップの新潮流
Feidの楽曲を聴いた人がまず感じるのは、「聴きやすさ」 だろう。
同じレゲトンでも、ハードでストリート色の強いTego CalderónやAnuel AAとは異なり、Feidはよりポップでメロディアス。
そのため、ラテン音楽に馴染みのないリスナーでもすんなり受け入れやすい。
彼の楽曲の特徴をまとめると、
・メロディ重視:サビが耳に残りやすく、シンガロングを誘う構成。
・柔らかいフロウ:声質が優しく、攻撃的すぎないトーン。
・トラップやハウスの要素も吸収:純粋なレゲトンに留まらず、ビートメイキングの幅が広い。
また、彼の出身地メデジンの空気感も大きく影響している。
プエルトリコ発祥のレゲトンに比べて、メデジンのアーティストは「洗練された都会的サウンド」を志向する傾向がある。
J Balvinが世界的に受け入れられたのも同じ理由だが、Feidもまたその流れを受け継ぎ、“国際市場を意識したレゲトン” を作り上げているのだ。
ライブでは、緑のキャップとカジュアルなストリートファッションでステージに立ち、観客をリラックスさせながら盛り上げる。
そのスタイルは「親しみやすさ」と「スター性」を絶妙に両立させており、フェスやクラブでの人気を後押ししている。
5. Karol Gとの関係:音楽とプライベートの交差
Feidを語るうえで欠かせないトピックのひとつが、同じメデジン出身のスーパースター Karol G との関係だ。
二人は長い間「コラボレーション相手」であり「恋人」としても話題を集めた。
音楽的には、Karol Gの楽曲にソングライターとして関わったり、ステージで共演する場面も多かった。
FeidのメロディアスなセンスとKarol Gの力強い歌声は相性が良く、ラテン音楽ファンからは“ゴールデンカップル”と呼ばれることもあった。
しかしプライベートでの交際が注目されすぎたことは、彼にとって諸刃の剣でもあった。
メディアは「Karol Gの恋人」として彼を紹介しがちで、アーティスト本人としての実力が正当に評価されにくい時期もあったのだ。
それでもFeidは、地道に自分の音楽を発信し続けた。
やがて彼の代表曲が世界的ヒットとなり、今では「Karol Gの元パートナー」ではなく、「レゲトンを代表するアーティスト」として確固たるポジションを築いている。
二人の関係はすでに終わっているが、その過程で得た注目や経験は、Feidのキャリアに間違いなくプラスに働いた。
音楽とプライベートが交錯することで、彼はより多くのリスナーに知られる存在となったのである。
6. サマソニ後の展望:日本と世界に広がるFeid現象
今回のサマソニ出演は、Feidにとって単なるフェス参加以上の意味を持つ。
それは 「日本市場における足がかり」 だ。
これまで日本では、ラテン音楽といえばLuis Fonsiの「Despacito」やDon Omarの「Danza Kuduro」といった一部のヒット曲が知られている程度で、本格的にレゲトンアーティストが国内に上陸するケースは少なかった。
しかし2025年、Bad Bunnyの来日決定と合わせて、Feidのサマソニ出演は「レゲトンが日本のポップカルチャーに入り込む転換点」として重要な意味を持っている。
今後の展望としては:
- サマソニをきっかけに日本でのストリーミング再生が増加する
- ワールドツアーに日本公演を組み込む可能性が高まる
- 日本のアーティストとのコラボレーションも期待できる
さらに、彼自身が「レゲトンを世界語にしたい」と語っているように、Feidは単に南米のスターにとどまらず、グローバルな市場を意識した活動を続けている。
サマソニ出演は、その戦略の一環として極めて理にかなった一手だったのだ。
日本での評価はまだ始まったばかりだが、この夏のインパクトをきっかけに、“Feid現象” がじわじわと広がっていくのは間違いない。
7. Feid必聴の代表曲5選
1. PORFA (2019)- Feid, Justin Quiles
切ない恋心を歌ったバラード調レゲトン。
「もう一度やり直そう」という感情をシンプルな言葉で表現し、世界中で共感を呼んだ。
YouTube再生回数は2億回を超え、Feidの国際的ブレイクを決定づけた一曲。
2. Feliz Cumpleaños Ferxxo(2022)- Feid
誕生日をテーマにしたユニークなタイトルだが、歌詞はどこか切なく、Feidらしい哀愁を感じさせる。
この曲で彼のSpotifyリスナーは一気に増加し、“Ferxxo”という愛称も定着。
ライブでも欠かせない定番曲となっている。
3. Normal(2022)- Feid
4. Chorrito Pa Las Animas(2022)- Feid
よりストリート色を強めた一曲。
トラップの要素を取り入れたビートとFeidの独特なフロウが融合し、硬派なレゲトンファンからも高い評価を得ている。
「ポップなだけじゃない」Feidの多面性を示す楽曲だ。
5. Hey Mor(2022)- Ozuna, Feid
プエルトリコのスターOzunaとのコラボ。
伸びやかなメロディと二人のボーカルの掛け合いが絶妙で、リリース直後から世界のプレイリストに入りまくった。
ラテンシーンの中でも特に“国際級”の一曲として位置づけられる。
8. まとめ
サマソニ2025で日本初上陸を果たしたFeid。
そのステージは、単なる一アーティストの来日公演ではなく、「レゲトンが本格的に日本のポップシーンへ入り込んだ瞬間」だった。
メデジンで育ち、ソングライターからキャリアを始め、数々のヒットを飛ばしてきた彼は、いまやBad BunnyやKarol Gと並ぶラテンシーンの中心人物。
メロディアスで聴きやすいスタイルは、日本の音楽ファンにもきっと受け入れられるだろう。
さらに、Karol Gとの関係や国際的なヒット曲の数々が彼を世界的スターへと押し上げ、今回のサマソニ出演はその流れの延長線上にある。
これから日本でも、彼の名前が急速に広まっていく可能性が高い。
もしこの記事でFeidに興味を持ったなら、まずは今回紹介した5曲から聴いてほしい。
きっとあなたも、気づけば「緑のキャップの男」の魅力に引き込まれているはずだ。
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