Bizarrap(BZRP)とは何者か?──“Music Sessions”が世界を食った理由を深掘り

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ラテン/レゲトンを追いかけていると、ある時点から「曲名より先に名前が飛んでくる存在」がいる。それはアーティストでもレーベルでもなく、Bizarrap(ビザラップ/BZRP)だ。

クレジット上は record producer / songwriter / DJ。つまり、表に出て歌うわけではなく、作曲・制作・構成面で曲を“成立させる側”にいる人間だ。
そして彼の代表プロジェクトが、番号付きで積み上がる 「BZRP Music Sessions」
このシリーズが、いまや国境を越えて“現象”として消費されている。

じゃあ、なぜ一人のプロデューサーがここまで巨大な熱狂を生んだのか。
彼がどんな環境から出てきて、どんな手順で“バズる型”を作り上げたのか──そこを押さえると、BZRPの強さがはっきり見えてくる。

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ブエノスアイレス郊外から生まれた“裏方のスター”

Bizarrapの本名は Gonzalo Julián Conde。1998年8月29日、アルゼンチン・ブエノスアイレス近郊の Ramos Mejía 生まれで、2017年頃から活動が本格化したとされる。

彼は最初から「歌い手になりたい」タイプではなく、幼い頃から電子音楽やDJカルチャーに惹かれ、10代で音楽理論や制作に触れ始めた。
つまりパフォーマーというより、最初から音を組み立てる側の視点で世界を見てきた。

そして象徴的なのが、キャップとサングラスのビジュアル。顔の表情で勝負するのではなく、世界観とフォーマットで勝負する。これが後に「BZRP」のブランディングにそのまま効いてくる。

出発点はYouTubeの編集:フリースタイル文化を“作品”に変えた

GQ Españaのロングインタビューは、BZRPの原点をかなり具体的に描いている。
2017年、彼は地元フリースタイルのバトル映像を“面白編集”した「Combo Loco」をYouTubeに上げて注目を集め、そこからトラップ曲のリミックス制作へ比重を移し、やがて Freestyle Sessions → Music Sessions へとフォーマットを進化させていく。 GQ España

ここで重要なのは、BZRPが“シーンの熱狂”をただ眺めていたのではなく、熱狂を「見える形」にして流通させたという点だ。
フリースタイルは本来「現場で起きる」カルチャーで、空気感・ライブ感が命である。でも彼はそれをスタジオに持ち込み、撮影し、編集し、番号を振って積み上げた。言い換えるなら、場の熱をコンテンツに変換する編集者として登場した。

だからこそ、彼の作品は曲単体というより「更新され続けるシリーズ」として伸びていく。

マーケ視点を“音楽の中”に混ぜた:UADEとWarnerの経験

BZRPの強さは、音のセンスだけでは説明できない。

GQの同インタビューでは、彼が高校卒業後に進路相談(職業適性テスト)を受け、マーケティングを勧められて UADE(Universidad Argentina de la Empresa)でマーケを学び始めたこと、ほぼ同時期に Warner Musicで働いたと語っている。 GQ España
さらにレーベル勤務で契約書など業界の裏方を経験したことが、後にアーティストとして契約する際の視野にもつながった、という趣旨の発言も出てくる。 GQ España

ここが、BZRPをただの“器用なビートメイカー”で終わらせない部分だと思う。
彼はたぶん、広告を派手に回すことよりも先に「どうすればプロジェクトが積み上がり、視聴者の習慣になるか」を理解していた。

BZRP Music Sessionsが“装置”になった理由:固定フォーマット×ゲスト入れ替え×番号

Music Sessionsの構造は、冷静に見ると驚くほどシンプルだ。

  • 舞台(スタジオ/映像トーン)が一定
  • ゲストだけが変わる
  • 番号(Vol.)で時系列に積み上がる

この三つが揃うと何が起きるか。視聴者側では、曲を聴くというより次回予告を待つという感覚が生まれる。
「次は誰?」が噂になり、公開日に一斉に再生され、過去回も掘られる。比較もランキングも回り出す。シリーズがシリーズとして自走し始める。

しかも、同じフォーマットだからこそ、ゲストの魅力が際立つ。BZRPは自分を主役にするのではなく、ゲストの“最も映える状態”へ寄せていく。歌を前に出す回もあれば、フロウの切れ味で押す回もある。
やっていることは一貫していて、ゲストが主役になれる舞台を用意すること。だから彼は「プロデューサー」以上に、プラットフォーム運営者に近い。

Billboardが言語化した“反マーケ”──積み上げることで巨大化する現象

この現象を言語化した記事としてよく引用されるのが、Billboardの
“Behind the ‘Anti-Marketing’ Strategy Driving the Bizarrap Phenomenon”(2022年7月29日付)だ。 ビルボード

ここでいう “anti-marketing” は、広告をしないという意味ではなく、派手な単発キャンペーンではなく、連載のように積み上げることで人々の行動そのものを変えていくという発想に近い。
これって、今のショート動画時代とも相性がいい。ひとつの回がバズれば終わりではなく、「じゃあ前のVol.は?」「次は?」へ自然に流れる。つまり“再生の導線”が最初から仕組みに埋め込まれている。

まとめ:BZRPは“歌うスター”ではなく、“熱狂が生まれる形”を設計した人

Bizarrapを語るとき、豪華ゲストや記録だけを追うと、どうしてもニュースの消費で終わる。でも本質は、そこじゃない。

  • フリースタイルの熱を、YouTubeで回る形に編集し直した GQ España
  • マーケと業界実務を経験し、積み上げ型の設計に落とし込んだ GQ España
  • 固定フォーマット×番号という“習慣化装置”で、シリーズをIPにした ウィキペディア

だからこそ彼は、表に立って歌わなくても、クレジット上は songwriter であり、プロデューサーとして“曲の運命”を握っている。 ウィキペディア
BZRPとは結局、音楽を作る人であると同時に、音楽が広がる仕組みを作った人なのだ。

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