女性レゲトンアーティストが切り開く“フェミニズムとセクシー”の最前線

はじめに──セクシーは「武器」か、それとも「表現」か？

ラテン音楽とセクシーさは、長年切っても切れない関係にある。
ダンスホールやレゲトンといったジャンルでは、女性の身体性がMVや歌詞の中で「視覚的な刺激」として描かれ続けてきた。しかし近年、その関係性に変化が訪れている。
「消費される存在から、主体的に表現する存在」へ。

女性レゲトンアーティストたちは、あえてセクシーなビジュアルや歌詞を用いながらも、フェミニズムの視点から自らの身体・声・アイデンティティをコントロールし始めている。
今回は、そんなラテン女性アーティストたちが切り拓く、“セクシーであることの再定義”に迫る。

Tokischa──タブーを壊し続けるドミニカの反逆者

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レゲトン界における最も過激なフェミニスト、それがTokischa（トキシャ）だ。
彼女はドラッグ、性、売春、LGBTQ＋、そして信仰といったタブーを赤裸々に歌い、自らのビジュアルでも社会に“揺さぶり”を与え続けている。

• 代表曲「Linda」ではRosalíaとの共演で“ガールズラブ”を祝福
• 「Delincuente」では、性的な自由と快楽を大胆に肯定
• セクシーな見た目とは裏腹に、内容は極めてラディカルかつ政治的

Tokischaにとってセクシーさは、“男に媚びるもの”ではない。
それは”自らの経験と思想を伝える“武器”であり、彼女の発信は「声を奪われてきた女性たち」の代弁でもあるのだ。

Villano Antillano──トランス女性として音楽と闘う

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プエルトリコ出身のVillano Antillano（ヴィジャノ・アンティジャーノ）は、トランス女性でありながらレゲトン・トラップシーンで頭角を現した稀有な存在。
そのラップスキルとアティチュードは、男女問わずリスペクトを集めている。

• BZRP Music Sessions #51で世界的にバズり、Spotifyバイラルにランクイン
• 女性であること、トランスであること、そしてアーティストであることのすべてをラップに乗せて表現

彼女の存在は、ラテン音楽シーンにおけるジェンダーの固定観念をぶち壊す。
MVではハイヒールを履き、ボディスーツを着こなし、誰よりも堂々と“セクシー”を体現。
それは「男性に向けたファンタジー」ではなく、“自分自身の誇り”としてのスタイルだ。

Young Miko──ボーイッシュ×セクシーの新時代スタイル

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Young Miko（ヤング・ミコ）は、プエルトリコ出身のクィアラッパー。
彼女は、従来の「レゲトン＝グラマラス女性」という構図を根底から崩すようなボーイッシュなルックで人気を集めている。

• 代表曲「Classy 101」ではFeidとコラボし、甘くも強気な恋愛観を表現
• 女性の視点から愛や性を描き、リスナーから共感を得る
• インスタではスケートボードやスニーカーなどストリートカルチャー要素が満載

彼女が見せるセクシーさは、身体を強調するタイプのものではない。
むしろ“等身大の魅力”であり、フェミニズムを声高に語ることなく、存在そのものがアップデートされた女性像になっている。

Ptazeta──中性的なビジュアルと、強いメッセージ性

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スペイン出身のPtazeta（プタゼタ）もまた、フェミニズム×セクシーの融合を象徴する存在。
彼女は中性的なファッションと堂々とした態度で、レズビアンであることを公言しながら活動している。

• ヒット曲「Mami」ではベッドシーンを取り入れながらも、力強く自立した女性像を提示
• フェスやTV番組でのパフォーマンスでは、ボディラインを意識した衣装とジェンダーフルイドな雰囲気を同居させる

Ptazetaは、「見た目やセクシャリティではなく、自分の言葉と音楽で勝負する」という姿勢を明確に打ち出しており、ティーンを中心に圧倒的な支持を受けている。

セクシーであることの“再定義”

かつて、ラテン女性アーティストにとってセクシーであることは“期待される属性”であり、しばしば「男社会の中で消費される役割」だった。
しかし今、TokischaやVillano、Young Miko、Ptazetaたちは自ら“セクシー”を再定義している。

• 他人に見せるためではなく、自分のために美しくある
• “媚びる”ではなく“攻める”セクシー
• ジェンダーや性的指向の多様性を積極的に含み込む

それは、ラテン世界に限らず、世界中の若者たちに新たな感性を届けている。
フェミニズムは怒りだけではなく、自己肯定と美学の延長線上にもあるのだ。

おわりに

「レゲトン＝ダンスミュージック」というイメージは今も根強い。
だが、その中で生まれているフェミニズムとセクシーの進化は、音楽のあり方そのものを変えつつある。

これからのレゲトンは、“踊れるか”だけじゃない。
“語れるか”“共感できるか”“自分を解放できるか”が問われる時代だ。

そしてその最前線にいるのが、これらの女性アーティストたちだ。
彼女たちのビジュアル、リリック、スタンス──
それらはすべて、「誰のためのセクシーか？」という問いに対する、明確な答えとなっている。