
SNSでよく流れてくるんですけど、全然ついてけなくて…。

その中でも外せないのがYoung Mikoって存在だ――ちょっと教えてやるか。

Young Miko(ヤングミコ)
Instagramフォロワー数: 800万人
X(旧Twitter) : 36万人
Spotify月間リスナー数 : 2,430万人
0〜5歳:アグアディージャという海辺の原点
1997年、Young MikoことMaría Victoria Ramírez de Arellano Cardonaは、プエルトリコのアグアディージャに生まれる。波音の聞こえるこの町は、観光地でありながら、地域社会の価値観は保守的でカトリック信仰も根強い。
彼女は絵を描くことが大好きな子どもで、スケッチブックとクレヨンを手放さずに過ごす日々。特にファンタジーや冒険に惹かれ、想像力を自由に羽ばたかせていた。
6〜10歳:アニメとの運命的な出会い
この頃、彼女の想像力に決定的な影響を与えたのが、日本のアニメだった。『NARUTO』『BLEACH』『ドラゴンボールZ』などの王道作品をリアルタイムで視聴し、キャラクターの強さや葛藤に共感したという。
Instagramやインタビューでは、自身が「オタク」であることを公言しており、アニメが後のビジュアルアートやリリックのインスピレーションにもなっている。彼女のMVに見られるカラフルで幻想的な演出は、この頃に芽生えた世界観の延長線上にある。
11〜15歳:葛藤と“詩”の始まり
思春期に差し掛かると同時に、Young Mikoは自身がレズビアンであることを自覚する。しかし、家族にも学校にも打ち明けられず、孤独な心の中に感情を押し込める日々が続いた。
そんな中で出会ったのが「言葉」だった。彼女はノートにラップのような詩を書き留め始め、感情のはけ口とした。ビートはまだなかったが、そこにすでに独特なリズムとメッセージ性が宿っていたという。
この頃から、好きなアーティストとしてNicki Minaj、Bad Bunny、Travis Scottなどを聴き始め、ジャンルに囚われない音楽観が形成されていく。
16〜20歳:タトゥーアーティストからラッパーへ
大学進学後はビジュアルアートを専攻し、同時にタトゥーアーティストとしても活動を開始。生活費の一部をタトゥーの収入で賄いながら、音楽活動にも少しずつ取り組むようになる。
この時期の彼女のInstagramでは、繊細かつポップなイラストやタトゥー作品が多く投稿されており、ラッパーである前に「表現者」としての強い美意識がすでに垣間見える。
20歳を過ぎたころ、Young Mikoはこれまで胸の奥に抱えていた想いを、ついに家族に打ち明ける決心をする。彼女は幼い頃から自身がレズビアンであることに気づいていたが、保守的な価値観の中で育った彼女にとって、それを言葉にすることは並大抵のことではなかった。
勇気を出して両親にカミングアウトをした後、彼女の父親はそれを受け入れてくれたという。そして後日、音楽活動が軌道に乗り始めた頃、彼女は父親にこう伝えた。
「パパ、もう働かなくていいよ。」
この言葉は、単なる経済的な意味を超えたものだった。自分自身として生きることを認めてくれた家族への感謝、そして自分の選んだ道で人を支えるまでに成長したという誇り。そのすべてが詰まった一言だった。
後にYoung Mikoはこの瞬間を、「人生で最も誇らしかった出来事」と語っている。それは彼女にとって、自己肯定と自立、そして音楽という道を本気で生きるという覚悟の象徴でもあった。
21〜25歳:『Trap Kitty』と世界的ブレイク
2022年、ミックステープ『Trap Kitty』を自主リリース。トラップとレゲトンをベースに、アニメ・フェミニズム・クィア文化を織り交ぜた彼女独自の音楽スタイルが爆発的に広まり、「Riri」や「Vendetta」がTikTokやInstagramでバイラルヒット。
そして2023年、アルゼンチンの人気プロデューサーBizarrapと組んだ「Bzrp Music Sessions Vol. 58」によって一気にグローバルアーティストの仲間入りを果たす。彼女のフロウ、ライム、自己肯定をテーマにしたリリックは、クィア・コミュニティからも絶大な支持を得た。
このセッションのYouTube再生回数は1億回を突破し、Rolling StoneやBillboardなどのメディアにも多数取り上げられるようになる。
※クィア・コミュニティ(Queer Community)
LGBTQ+(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー・クィアなど)に該当する、性的指向・性自認・ジェンダー表現の多様性をもつ人々の集まりや文化的共同体を指す。
26歳〜現在:アートと人生を融合させた『att.』
2024年には待望のデビューアルバム『att.(アティ)』をリリース。この作品は、音楽・映像・ファッション・フィロソフィーを統合した総合アート作品とも言える内容で、「Wiggy」「Curita」「Lisa」などの楽曲が収録された。
アルバムの公式ページ(youngmiko.com/att)では、彼女が影響を受けたアニメ作品やアートワークの裏側が紹介されており、単なるラッパーにとどまらない芸術家としての側面が強調されている。
さらに2025年現在、彼女はワールドツアー「Trap Kitty World Tour」を展開中。アメリカ本土はもちろん、ヨーロッパや南米でもライブを行い、日本のファンにも人気が広がっている。Virgin Music Japanの紹介ページでも彼女の楽曲が特集され、日本語でのファン向け情報も増えてきた。
Young Mikoとは何者か?
彼女の音楽は、単なる「ラテン・トラップ」ではない。そこには、セクシュアリティ、アニメカルチャー、ストリートアート、そしてラテンのリズムが融合している。
Young Mikoは、リスナーの「当たり前」を更新し続けるアーティストだ。ジャンルもジェンダーも超えて、誰もが自分のままでいられる世界を、彼女はビートと詩で描き出している。
そして、その旅路はまだ始まったばかりだ。
オススメ3曲
1.Curita
軽快なダンスホールグルーヴと優しいボーカルが心を包む、癒し系アーバンラブチューン。
心の傷にそっと寄り添うようなリリックも必聴。
2.Wiggy
中毒性のあるビートとセクシーな雰囲気がクラブ映え抜群のキラーチューン。
3.WASSUP
重低音が効いたビートに、ミコの鋭いラップとチミのバースが絡むストリート感全開の1曲。パーティーでも映えるバンギンな一発!
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